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 われわれは“しこり”とよく言いますが、どうもあまり一般的な単語ではないようです。触って何となく硬く感じるものは、医学用語では“硬結”と言います。それに対して“腫瘤”は文字通り“瘤(こぶ)”です。自分で乳房のどこかに、こりこりと触るものがあったとして、これを“しこりとここではします。この乳房の“しこり“をもたらす3大疾患は頻度からは、乳腺症、線維腺腫、乳癌でしょう。痛みを伴うしこりの殆どは乳腺症思われます。乳腺症は、10代から60歳台までみられます。卵巣から分泌される2種類のホルモンに対する乳腺の過剰反応があって、乳腺が色々な変化をきたすことが原因と考えられています。痛みもしこりの感じ方も生理周期に関係して、その時期に近いとひどくなり、生理が終わると収まってきます。線維腺腫は良性です。これであることが証明されれば、原則として切除する必要はありません。触って何か感じても、本当にそこが正常な乳腺組織から異なるものでできているかが問題で、その診断のための第1歩が画像診断と言えます。今後は、画像診断で”正常な乳腺組織から異なる“と認められたしこりを本当の”しこり“と扱って話を進めます。
 原則として、“しこり”=腫瘤 と考えてましょう。ですから、腫瘤は画像で容易に見えます。それならば、最も手ごろで扱いやすい機器で異常部の核心から標本を採取すればよいのです。画像診断後の精密検査としては、針を刺して行う、細胞診や組織診があります。基本的にはどちらを行ったとしても、まずはきちんと腫瘤に刺すことができるか、充分量の検体が取れるか、は熟練を必要とします。まずは、最初の段階として、きちんと目的の病変から検体を採ってくることが必要で、そのために画像を見ながら行います。これを画像誘導下と言い、生検の意味は、像を見ていた検査から、中身を取り出すいうものです。
これには大まかに分けて3通りあります。

1) 穿刺吸引細胞診:注射針を直接「しこり」に刺して細胞を採ってきて、顕微鏡で診断します。針は通常の採血する針と同じです。液体を伴った「しこり」の場合に適した検査です。この細胞診では、実際にその部を構成している細胞を採ってきて分析するので、実際に構成された組織をそのまま診るのではなく、推定することになります。最も、かなり組織診断に近い時が多いのですが。
2) 針生検組織診:細胞が組織を作ります。その組織の一部を採ってきて顕微鏡で診断します。細胞診よりも「しこり」の構造情報が沢山得られるのでキチンと「しこり」の核心に刺さっていれば、確定診断となります。針の太さはさまざまです。組織採取の方法には、確実に手早くやる方法で、以下があります。
ばね式針生検;ばねの力を利用して、一瞬のうちにマッチ軸からマチ針ほどの組織を取ります。当院では一番採用しています。検査直後は1~2mmの傷跡が残りますが、最終的にはほとんど見えなくなってしまいます
(図8)。

 吸引式針生検;針は3~6mmほどで、それくらいの傷が少々つきます。しかし、マンモトームという機械では標本を連続して採れること。バネ式に比較して大きな組織片が確実に採れることから、時には良性腫瘤で邪魔であったりした場合に、外科切除の代わりに行うこともあります。
3)摘出生検:「しこり」そのものを直接手術で取って調べる検査です。丸ごと取れば、まず診断に誤りはありませんが、傷跡が残ります。また、十分に切除するのであれば、治療としても成立します。良性腫瘤の中でこれを行うことは、治療が必要とされるものでされるべきと考えます。診断の多くは針で十分なのが現状です。

治療(切除)が必要とされる良性腫瘤には、
①放置しておくと巨大化して、やがては摘出しなければならないもの。3~4cmまでの大きさで、形が複 雑でなければマンモトームでもOKです。例えば、巨大線維腺腫、葉状腫瘍、乳頭腫、腺腫のうち一部。このうち、葉状腫瘍は、何回も再発すると悪性化の問題もあり、切除がお勧めです。
②悪性かどうかの診断が難しい。または、極めて早期の悪性腫瘍で、確定に及ばないが、将来の禍根を絶っておきたい場合。例えば、異型のある乳管内乳頭状病変、腺腫のうちの一部(乳頭腺腫、乳管腺腫)や乳腺症の一部(閉塞性腺症、線維症)。
③ご本人のたっての希望。気になって仕方がないし、なんとなく目障り、痛い?

 細胞診標本と組織診標本の違いは、穿刺吸引細胞診が土を削り取って採取して、その成分から土壌の質を測るのに対して、針生検組織診ではスコップかボーリングで塊を取ってきて、地層まで見て土壌の調査をするような感じでしょうか(図9;同じ硬癌です。診断も同じです)。


癌の場合には、手術する前に、その癌にホルモン感受性(女性ホルモンに反応して大きくなってきたか)があるのか、ないのか。そして、新しい分子標的治療薬に対する感受性(癌の治療に有効かどうか)があるのか、を知ることが治療方針を決定する際に重要です。そこで、組織診断のほうが有利になります。がん細胞の表面にはさまざまな蛋白質が乗っかっていて、ホルモン受容体とは、女性ホルモンを癌細胞の表面に結合させるもので(椅子です)、そこから癌がどんどん増えていく(分裂・増殖)信号を伝えていくためのものです。これがたくさんある癌では、女性ホルモンをなくすか、がん細胞にくっつかないようにさせれば癌は増えていけないので、やがて消えていく、というわけです。これが内分泌治療です。こういった情報は、組織診断のほうが確かに得られるわけです。

参考文献)
藤井雅彦、石井保吉、松永忠東.乳頭分泌細胞診と穿刺吸引細胞診 月刊 臨床と研究 70(11):3397-3403  1993 松永忠東.がん検診の現状と細胞診 日本臨床細胞学会東京都支部会報22:14-19  2004



 微細石灰化像は、乳管の中で起こったものとそれ以外とで全く対処が違います。乳管内の出来事であれば、そこから更なる検査が必要になります。増殖した癌によって出来たものと、そうではない原因の2つです。後者の良性の石灰化像の中にも、癌と紛らわしいものがあり、組織検査が必要となります。以前は切り取って調べなくてはならなかったのですが、最近はステレオガイド下吸引式針生検というのが主体です。これは、マンモグラフィでしか写らないものを、レントゲンで撮影しつつ位置決めをして、太めの針を入れて組織を吸引して採ってくる方法です。普通の針生検よりも組織が多く採れるので、診断に有利なのです。乳管の中の癌は、拡張した乳管の中で腫瘤を形成しているものもありますが、微細石灰化像の多くは、1mmに満たない乳管の中で、癌が進展(増殖して這っていくような形で広がる)しているので、細くて1本2本の標本では癌の組織が十分採れないことが多いのです。癌は微細石灰化を癌がある腺管の真ん中に作るので、確実に微細石灰化像を採取することが最前提です。これは外来で、局所麻酔を使って行います。
 微細石灰化像だけで見つかる乳癌は、基本的には乳管内癌、つまり乳管の中に留まっている癌であることが多いので、転移の心配はほとんどないのです。そういう段階ですから、病理診断も極めて難しいわけで、専門の病理の先生(乳腺病理)でなければ判定が間違うこともあります。癌と診断するための、正常な細胞と異なる異なり方(異型度と言います)が少ないからです。超音波では検出が困難だったり、所見が微妙で難しいものほどその傾向は強いのです。ですから、マンモグラフィを撮影して、如何にそれを観察して診断するか(読影と言います)が重要で、このとき過去の写真があるならば、きちんと比較するのは大変参考になります。癌は進行して行くので、必ず一定の期間を置いて観れば、そこに変化が生じているからです。マンモグラフィの診断に関しては、マンモグラフィ装置、撮影する者の技量、読影者の技量、の3つが必要です。本邦では精度管理中央委員会という組織が認定をしています。

マンモグラフィ関しての参考文献、著書)
佐藤泰、松永忠東.乳癌マンモグラフィ像の研究:直接、間接所見と病理所見との対比を中心として
東医大誌49(5) : 1ー13  1991
松永忠東,他.乳癌の乳房撮影所見の経時変化、 過去に検診で受けた乳房撮影所見との比較,
日本医放会誌 52:1529ー1539,1992
松永忠東,他.マンモグラフィ上の微細石灰化像の範囲と乳癌進展範囲の比較及び微細石灰化像の経時変化:標本ラジオグラフィと病理所見の比較, 日本医放会誌    54:827ー834.1994
松永忠東,他.Correlation between radiographic estimates and histological size of extent of breast carcinoma. Comparison of specimen radiography and pathological findings. Breast Disease 8:217-275.1995
松永忠東,他.Computerized Image Analysis of Clustered Microcalcifications on Mammography: Morphometric Comparison between Mammography and Pathology.Breast Cancer 3(3) : 181ー190.1996
松永忠東,他.乳癌微細石灰化像の画像解析と経時変化.日乳癌検診会誌 6(1) : 19-25    1997 松永忠東,他.Chronological changes of microcalcifications of breast carcinoma. Breast Cancer 5(3) : 269-277.1998 松永忠東、小林剛、佐藤信也、他.研修用テキスト マンモグラフィ ,東京都健康推進財団,1999 松永忠東、小林剛.手にとるようにわかるマンモグラフィ ベクトルコア 2002 松永忠東.手にとるようにわかる マンモグラフィII ベクトルコア 2006 松永忠東.コンパクトXαシリーズ 読影のためのマンモグラフィ ベクトルコア 2009

 乳頭異常分泌に関しては、現在授乳中ではないということが前提です。そして、乳がんの兆候としてあげる場合、血性であることが多いのです。乳頭異常分泌としての本格的な検査を進める前のチェックとして、以下があります。
1. 本当に分泌でしょうか?
 乳頭からの分泌とは乳管の出口(乳管乳頭開孔部:母乳の出口)から出てくるものを指します。乳管は一側の乳房に15本から20本前後あると言われています。したがって、いくつかの開口部から出てくることもあります。乳頭は皮膚組織ですから、潤いを保つための皮脂腺があります。乳管はこの皮脂腺から分化したという考えがあります。乳頭を強く押すと皮脂腺や使われていない乳管から白い歯磨き粉のものが出てくることもあり、これを分泌と勘違いされる方が少なくありません。また、分泌液ではなく浸出液であることもあります。浸出液とは、例えばアトピーの方では乳頭部がガサガサになって、痒くてつい掻いてしまったりで傷がつきやすいですね。特に乳頭は尖った先端で、ブラジャーなどでこすれたりします。その、いわば擦り傷のときのジクジクした液を浸出液といいます。分泌液かどうかは、乳頭にむかってしごくようにすると、水玉のようにぷっくり盛り上がるものです。お風呂で温まった後に出やすいのです。白いティッシューに付けてみれば、色が分かります。
2. 分泌とすると1箇所から出ますか?
 左右のいくつかの開口部から出る分泌は、
1)生理に関係した、機能的なもの。乳房は子宮と同様に女性ホルモンの影響を強く受ける臓器です。その結 果、乳管、乳腺を形成する細胞にある種の変化が起きて分泌を始めることがあります。
2)乳腺組織に大きく影響するもう1つのホルモンにプロラクチン(乳汁分泌ホルモン)があります。このホルモン は乳汁を作って分泌させるホルモンで、脳下垂体という卵巣とはまったく違って、頭のほうから出てきます。 勿論授乳中は高くなって当然ですが、別の病気やくすりなどを飲んでいて、それが原因で分泌が起こること があります。このような症状をきたす薬は、胃潰瘍薬(特にドグマチールが多い)、精神安定剤、利尿剤、が 有名です。また、脳腫瘍によって分泌が起こることもあります。この場合は良性腫瘍であり視野がせまくな るなどの特別な神経症状がないかぎり手術したりすることはありません。この腫瘍は乳汁分泌ホルモン(プ ロラクチン)を産生しますので血液中のプロラクチン濃度が高値ならばMRI検査で下垂体を見れば診断がつ きます。ちなみに薬の副作用の場合も血液中のプロラクチン濃度が上昇しますが、プロラクチン産生腫瘍の 場合とは桁が違います。

 以上のこととは異なって、 左右どちらか(稀に両側のときもあります)のひとつの開口部(あるいは2,3箇所のときもあります、少ないですが)から血液混じりの分泌が出る場合には、原因に乳管の中に腫瘍ができたためということを考えて検査を進めます。腫瘍からの出血が乳頭の乳管の口を通って出てくるのです。その原因をつきとめるには通常のマンモグラフィ(乳房専用X線装置)や超音波検査の他に乳管造影、乳管内視鏡、MRIなどの画像検査や細胞、組織検査などがります。病変が極めて小さいのと良性と悪性の鑑別が難しいのでこれだけの検査が行われています。癌であるのか、そうでないかは、扱い方はまったく違うわけですから、ここはどんなに大変でも、しっかりと診断しなくてはいけません。乳管造影で乳管の中のどの枝にあるかを確認し、それを乳管内視鏡で観察して処理する。つまり、良性であれば乳管内視鏡で取って治療することも可能ですし、癌の確定診断も、手術をせずに行えるのです。しかし、その後の定期検診が重要なのは言うまでもありません。乳管内の病変であれば、もし、癌であっても極めて早期の状態で生命には係わりません。また、良性であれば乳管内乳頭腫と言って、外科的に切除するよりも、乳管内視鏡で観察しながら取り除くことができます。成功すれば、手術の傷はつかず、分泌も止まります。また、大きな傷をつけてまで取らなくてもよいのです。私はこういうことに15年以上費やしておりまして、私個人の資料では80人以上の方に行って、7割ほどの方で血性分泌が消失しております。この良悪性の鑑別診断には、細胞診にしてもその採取方法によって検出力に大きな差が出ます。労力がかかりますが、乳管内洗浄法という方法が優れています。そして、もし、万が一でも乳管内の癌であっても、転移(他の臓器へ癌が移ってしまうこと)の危険は極めて少ないのです(図10)。


乳頭異常分泌に関しての参考文献、著書)
松永忠東,他.乳頭異常分泌症例における乳管造影所見.日臨外医会誌 51:2365ー2370.1990
松永忠東.乳管内視鏡検査の有用性と内視鏡下生検の経験 乳癌の臨床  13(1) : 128-130  1998
中村祐子、松永忠東.無腫瘤性乳管内病変の鑑別診断における乳頭分泌液中CEAの測定意義 東医大誌57(4 ): 385-396 1999
松永忠東,他.Mammary Ductoscopy for Diagnosis and Treatment of Intraductal Lesions of the Breast.Breast Cancer 8(3): 213-221 2001 松永忠東,他.乳頭異常分泌に対する乳癌検診:確定診断への診断過程 日乳癌検診会誌 11(3) : 281-288 2002
Mokbel, K, Escobar, PF, Matsunaga, T.MAMMARY DUCTOSCOPY: current status and future prospect. Eur J Surg Oncol 31: 6-8 2005 Escobar, P F , Ceowe JP, Matsunaga, T Mokbel, K . The clinical aplications of mammary ductoscopy. Am J Surg 191: 211-215. 2006
松永忠東,他.Intraductal Breast Biopsy for Diagnosis and Treatment of Intraductal Lesions of the Breast. Cancer 101: 2164-2169 2004
松永忠東,他.Management of intraductal lesions with bloody nipple discharge.  Chin J Clin Oncol Special Issue for The 4th
Congress of The World Society for Breast Health 94-95  2007
松永忠東,他.Intraductal Approach to the Detection of Intraductal Lesions of the Breast. Breast Cancer Res Treat (2009) 118:9?13 2009 松永忠東.乳癌診断のコツと落とし穴 ここがポイント 血清乳頭異常分泌に対する検診・検査の進め 中山書店,200-201 2004