2018.11.28お知らせ
近年、豊胸用filler(以下、充填剤とする)に関する報道が散見されますので、ことの顛末についての解説をしましょう。
ことの発端は韓国の申医師が美容形成外科雑誌 aaps (Archives of Aesthetic Plastic Surgery)に投稿した一編の論文です。
論文のタイトルは”Correcting Shape and Size Using Temporary Filler after Breast Augmentation with Silicone Implants”「シリコンを用いた豊胸術後の形と大きさの修正に有効な吸収性充填剤」。
この論文に反論したのが President of Korean Toxin-Filler Research Association of Plastic & Reconstructive Surgeons すなわち韓国形成外科注入充填物研究会(仮称)会長です。かれは韓国形成外科学会の乳房班の医師です。同学会誌にletterとして反論文を投稿したのです。
その理由は以下の通り。
というのが反論の論拠です。
アクアフィリングはCEマーク(EU加盟国基準適合マーク)を取得しているわけですし、KFDA(韓国食品医薬品局)の認可も取得しているのですから、製品に何ら問題がないのなら、申医師はこの反論文に学会誌上で反論しなければいけないのですが、それをおこなっていません。そのために学問上は韓国形成外科学会乳房班の勝利ということになってしまいました。
これに呼応したのが日本美容外科学会(JSAPS)です。会員に向けて豊胸用充填剤の合併症についてアンケートをおこない、本年10月14-15日東京で開催された日本美容外科学会総会で、
緊急企画パネルディスカッション「美容医療における注入合併症と未承認・個人輸入問題」と題して討論をおこなったのです。
後日、豊胸用充填剤は規制・中止の方向へ向かうという見解がメディアを通じて公表されました。
このことを重く見た、NHK-朝日新聞-時事通信社からなる国際調査報道ジャーナリスト連合(ICIJ)が、さらなる取材をおこなって今回の報道となったのです。
そこで乳腺専門医の立場から、報道の真偽について解説をしましょう。 まず韓国形成外科学会乳腺班の医師の主張に対する反論です。
日本美容外科学会の対応は正しかったのでしょうか。
問題のあった症例ばかりを診ているわけですから、豊胸用充填剤に否定的になるのは当然でしょう。 また充填剤を使用している美容外科医は自分たちのライバルですから、充填剤の使用を禁止したくなるのも理解できます。 しかし、脂肪注入は規制せずに、充填剤だけを禁止にしようとするのは間違っているでしょう。
私の考える理想的な対応とは以下の通りです。
すでに充填剤が入っている場合、問題がないのでしたら除去する必要はありません。
今、異常がある方は乳がん検診を受けて下さい。